東京都が2024年4月から、2025年3月末まで資産運用業の拡大に向けた補助金を行っています。独立系投資運用会社が、東京に拠点を設置し創業する場合に、 投資運用業 登録費用等、協会費、法務費、運用事務費用等の資産運用業創業に係る特有の費用につきその一部を最大50%、500万円まで支援する制度です。
コロナ明けに起業した資産運用業者や、投資助言業 ・ 投資代理業からの業転を図る会社には朗報ですので、この機会を活用できるのか確認してみましょう。
行政書士報酬のお見積もりはチャットボットが自動でお示しいたします。
資産運用業の創業に係る補助金
人的資源等が限定されている創業期の独立系資産運用業者が対象になります。具体的には、2021年4月1日以降に投資運用業(適格投資家向け投資運用業)の登録を行った独立系新興資産運用業者になります。
補助金の目的は、主たる業務である運用業務に経営資源を集中できるよう、創業に係る特有の費用の負担を軽減するために、同費用の一部を補助します。
補助金受給者の要件
1 東京に拠点を設置していること
2 独立系であること(大企業、金融機関等の子会社や関連会社でないこと)
3 2021年4月1日以降に投資運用業(適格投資家向け投資運用業)の登録の事業者等の要件を満たしている者
適格投資家向け投資運用業は、一般の個人投資家を対象とせず、「適格投資家」だけを対象とした投資運用業のことを指します。適格投資家とは、一定の資産規模や知識を有する投資家のことを指し、これには法人や個人が含まれます。
金融機関や年金基金などプロの投資家のみを相手とする適格投資家向け投資運用業者は、一般の投資運用業者と比べて規制が緩和されています。例えば、最低資本金要件がない、または一部の報告義務が免除されるなどの特徴があります。
しかし、その一方で、適格投資家向け投資運用業者は、適格投資家であることの確認や、適格投資家に対する適切な情報提供など、一定の義務を負うことになります。
参考記事:投資運用業 登録申請
補助金額
補助金の対象となる経費の50%で、上限額は、500万円(投資信託協会加入者)又は300万円(日本投資顧問業協会加入者)になります。
補助金額支給上限額、補助率は下記の表に記載の通りです。
補助事業期間内に発生し、補助事業期間内に支払った費用が対象となります。
登録から初年度 | 2年目 | 3年目 | |
補助率 | 50% | 33% | 25% |
投資信託業者 | 500万円 | 300万円 | 100万円 |
上記以外の投資運用業者 | 300万円 | 150万円 | 50万円 |
初年度補助金受給者は、 令和5年4月1日以降に投資運用業者としての登録を行った者で、旧補助金要綱による補助金を1回も受給していない者になります。2年次補助金受給者は令和4年4月1日以降、3年次補助金受給者は令和3年4月1日以降の登録で、旧補助金要綱による補助金を1回も受給していない者です。
適用期間
本要綱の適用期間は、令和6年4月1日(月曜日)から令和7年3月31日(月曜日)までとなります。
補助対象費用
1 投資運業 登録費(弁護士・行政書士費用)
2 投資信託協会又は日本投資顧問業協会の加入費(初年度)と年会費
3 法務・コンプライアンス関連費用等
(1)法務顧問契約費用
(2)コンプライアンスの外部委託費用(適格投資家向け投資運用業者に限定)
4 運用事務委託・システム関連費用等
(1)ミドル・バックオフィス業務の事務外部委託または当該システムの契約費用
(2)システム費用(情報システム、評価システム等)
補助金の支給手続イメージ
応募の時期は、資産運用業の業登録完了後です。
参考:資産運用業の創業に係る補助金 (東京都)
投資運用業 起業補助金 提出書類
下記の書類が基本的な提出書類です。
- 応募申込書
- 誓約書
- 応募者の概要及び資産運用手法
- 補助金の交付申請書
- 継続受給に関する申請書
- 資産運用業務実績報告書(四半期報告書)
- 資産運用業務実績報告書(決算報告書)
- 資産運用業の創業に関する補助金の請求書
投資運用業 とは
投資運用業は通常の4つの業務に加えて、適格投資家向け投資運用業という新しい業務ができました。最低資本金が1,000万円で良いなど、より緩和された登録要件の下で業務を行うことが可能です。
新規開業の支援であり、最も条件の軽い
投資運用業の区分
(通常の)投資運用業
- 資産の運用に係る委託契約に基づく登録投資法人の財産の運用(投資法人資産運用業)
- 投資一任契約に基づく顧客の財産の運用で、有価証券又はデリバティブ取引に係る権利に対する投資として行うもの(投資一任業)
- 投資信託委託会社としての投資信託の運用(投資信託委託業)
- 信託受益権(投資信託の受益証券を除きます)又は集団投資スキームの権利者から出資された金銭等の自己運用、運用資産の50%超を有価証券又はデリバティブ取引に係る権利に対する投資に充てるもの(ファンド運用業)
適格投資家向け投資運用業
- ただし、権利者(投資家)が適格投資家のみ
- 運用財産の総額が 200 億円以下である場合に限定
平成23年の金商法改正は、適格投資家向け投資運用業の制度ができました。つまり、プロの投資家を対象とした小規模のファンドの運用を行う運用業をプロ向けの投資運用業と定義しています。
この投資運用業を立ち上げる場合にあたっては、今までの投資運用業の登録と比べて、登録要件等を緩和することにより、立ち上げやすくしようという改正が今回の金商法改正で行われました。
「適格投資家」の範囲
以下の通りで、小口の個人投資家ではない大口のプロ投資家になります。
①適格機関投資家、国、日本銀行
②上場会社、資本金5億円以上と見込まれる株式会社、特定目的会社、外国法人など
③有価証券等の金融資産が一定以上であると見込まれる等の法人又は個人
④投資運用業者が運用を行うファンド
⑤プロ等に限定した投資運用業者の一定の役職員又は親法人等 など
創業期の独立系資産運用業者(EM)とは
EMとは、(1)もしくは(2)いずれかに該当し、(3)に該当する会社となります。
(1)「新興資産運用業者」又は
(2)「海外から新規に東京に進出してきた資産運用業者」のいずれかに該当し、
(3)以下の要件に掲げる ア から セ の全て満たす
新興資産運用業者:ア及びイの要件を満たす者
ア: 令和3年4月1日以降に、下記(3)アの登録を受けていること
イ: 下記(3)アの登録前に、日本国外において資産運用に関連する免許を保有する資産運用業者又はその子会社等でない者を指す。
海外から新たに東京に進出してきた資産運用業者:ア及びイの要件を満たす者
ア :平成30年4月1日以降に日本国外で運用を開始した資産運用業者又はその子会社等(グループ会社の運用実績を含む。)であって、令和5年4月1日以降に、下記(3)アの登録を受けていること
イ: 日本国外において資産運用に関連する免許を保有する資産運用業者又はその子会社等であって、下記(3)アの登録を新たに受けた者を指す。なお、既に日本国内に下記(3)アの登録を受けた子会社等を設立している外国法人が、新たに設立した子会社等は除く。
応募者すべてに該当する要件
ア: 金融庁又は地方財務局等に金融商品取引業者(投資運用業)の登録をしていること(「適格投資家向け投資運用業」を含む)
イ: 「顧客本位の業務運営に関する原則」を遵守すること、又は令和7年3月31日までに遵守することを予定していること
ウ: スチュワードシップ・コードの受入れを表明していること、又は令和7年3月31日までに受入れの表明を予定していること
なお、コードそのものの受入れを表明しない場合には、その理由を東京都に説明すること。また上場株式の空売りを伴う運用である場合、又は株式を投資対象としない場合はその旨を記載のこと
エ: 都内に本社又は事業所等の登記を行っていること。
オ: 運用残高基準では、EMが運用しているファンドの運用残高の基準は設定しない。
カ: 資産運用業の創業に係る特有の業務について外部委託等を行っていること
キ: 主要株主基準等で、以下(ア)(イ)の子会社等となっていないこと。つまりは、実質的に大企業又は金融機関の出資を受けて設立された者でないこと
(ア)会社法上の大会社
(イ)金融庁から免許、許可、金融商品取引業者の登録等を受けている金融機関
ク: 原則として、金融商品取引法上の金融商品を投資対象とし、現物資産(木材、農産物、鉱物、不動産等)への直接投資は含まないこと(信用事由による保有は対象外)
ケ: 法令等で定める租税についての未申告、滞納がないこと
コ: 現在かつ将来にわたって、暴力団員等(東京都暴力団排除条例(平成23年東京都条例第54号)第2条第2号に規定する暴力団、同条第3号に規定する暴力団員及び同条第4号に規定する暴力団関係者をいう。以下「暴力団員等」という。)に該当しないこと、暴力団員等が経営を支配していると認められる関係等を有しないこと及び暴力的な要求行為等を行わないこと
サ: 過去に国・都道府県・区市町村等から助成を受け、不正等の事故を起こしていないこと
シ: 行政処分により業務停止命令の期間中である運用会社でないこと。行政処分により業務改善命令を受けており、行政庁に対する報告等の対応が全て完了していない運用会社でないこと
ス: 違法若しくは適法性に疑義のある事業又は公序良俗に問題のある事業を営んでいないこと
セ: その他、EMとして不適切とみなす事項がないこと
投資顧問業の方には運用業への進出の好機
独立系投資運用会社が、東京に拠点を設置し創業する場合に資産運用業創業に係る特有の費用につきその一部を支援する制度が始まっています。2025年3月までが期限ですので、これから会社設立をして資産運用業の申請をしても最大50%の補助金を獲得可能です。
補助金は独立系の創業者が対象ですので、これまで投資顧問などをされてきた会社の新規業種転換には朗報です。この記事では補助金受給者の概要やその申込期間、補助金対象も説明してきました。業界団体への加入も多額の費用が掛かりますので補助はありがたいですし、運用事務委託・システム関連費用等の初期導入にも使えます。
IT業界からの参入も多いので、あまり運用業界に慣れていない方向けに投資運用業とは何かを解説し、今回の創業期の独立系資産運用業者を簡潔な記載から詳細まで列挙いたしました。また、機関投資家の行動規範について、企業の価値向上や成長を促すことを目的とするスチュワードシップコードで、上場株式の空売りを伴う運用である場合、又は株式を投資対象としない場合はその旨を記載のことなど、運用スタイルに制約があるのも東京都としての要望が伝わります。
申込の期間が一年を切っており、法人設立や資産運用業の申請にも半年近くかかりますので、これから開業を準備する方は急がなければなりませんし、既に開業されている会社も確実に申請を通すためには検討を始める時期にあります。金融業に精通した行政書士として、このような補助金の情報にも常にアンテナを伸ばしております。
金融商品取引法にもとづく登録申請のみならず、補助金の申請についても、ぜひ行政書士にご依頼ください。