小林製薬の紅麹が健康被害を与えている可能性について、世間でも大きく騒がれています。健康食品として、様々な食品やサプリメントなどにも材料として使われていた影響で、回収騒ぎが起こっています。行政書士はペット業界ともお付き合いがございますから、ペットの話題にも敏感です。ペットフードの安全性も心配です。これに対しては、ペットフード安全法があって ペットフード製造 についての規制があります。
過去記事:第一種 動物取扱業 登録申請は行政書士へ
ペットフード安全法では、成分や表示などが輸入品を含めた開示が求められ、薬機法で管理される医薬品にも通じるように日本での管理は安心できそうです。ペットフードの製造や販売に関わる規制をまとめてみましたので、ペット業界でのお仕事や、自作のドッグフード販売などで届出が必要ではと不安を感じる方は是非ともお読みください。
紅麹のペットフードへの使用を否定
小林製薬「紅麹」健康被害で、ペット用のおやつ「ちゅ~る」は関係ありませんと、いなばペットフード社が公表しましたが、世間こうしたは話題で持ちきりです。
ペット用おやつ「ちゅ~る」シリーズを販売する「いなばペットフード」(静岡市清水区)は26日、小林製薬が製造した「紅麹(こうじ)」成分が入ったサプリメントを摂取した人に健康被害が確認された問題を受けて、「(「ちゅ~る」シリーズなど)使用の紅麹色素については、小林製薬が供給している関連原料と一切の関係はない」と公式サイトで明らかにした。
「ちゅ~る」はまぐろやかつお、ささみをペースト状にしてスティック袋に入れた猫用、犬用のおやつ。原材料に「紅麹色素」を使用していると表示されており、X(旧ツイッター)上で飼い主らから不安の声が上がっていた。
「ちゅ~る」は関係ありません、小林製薬「紅麹」健康被害でいなばペットフード、産経新聞 2024/3/27
小林製薬は対象となる製品の使用を中止するよう呼びかけています。この会社が自主回収を進めている健康食品に使用しているものと同じ紅麹原料が、子会社を通じて取引先に販売され、食品などに使われたことが分かっていて、食品メーカーなどが自主回収する動きが相次いでいます。
参考記事:小林製薬の 紅麹サプリ に見る機能性食品と 薬機法
上記記事では、機能性表示食品の仕組みや、トクホで有名な特定保健用食品の認可手続きの違いにも触れつつ、薬機法とも関係する今回の健康被害を取り上げます。
ペットフード安全法
正式名称を「愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律」通称「ペットフード安全法」と言います。ペットフードの製造や販売などについて規制を設けることで、ペットフードの安全性とペットの健康を守ることを目的とした法律です。ペットフードは、愛がん動物用飼料とされます。
この法律は、愛がん動物用飼料の製造等に関する規制を行うことにより、愛がん動物用飼料の安全性の確保を図り、もって愛がん動物の健康を保護し、動物の愛護に寄与することを目的とする。
愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律 第1条
ペットフードにも、製造業者と輸入業者には最も緩い規制である届出が課されています。医薬業界を定める薬機法とは異なり、販売業者への規制はありません。
この法律において「愛がん動物」とは、愛がんすることを目的として飼養される動物であって政令で定めるものをいう。
2 この法律において「愛がん動物用飼料」とは、愛がん動物の栄養に供することを目的として使用される物をいう。
3 この法律において「製造業者」とは、愛がん動物用飼料の製造(配合及び加工を含む。以下同じ。)を業とする者をいい、「輸入業者」とは、愛がん動物用飼料の輸入を業とする者をいい、「販売業者」とは、愛がん動物用飼料の販売を業とする者で製造業者及び輸入業者以外のものをいう。
愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律 第2条
ペットフード安全法の概要
犬及び猫用ペットフードには下記の表示が義務付けられました。
- 名称
- 原材料名
- 賞味期限
- 製造業者等の名称及び住所
- 原産国名
平成21年6月からペットフードの輸入業者、製造業者又は販売業者(小売は除く)は、輸入・製造・販売の記録を残すために、帳簿の備えつけが義務付けられました。
有害な物質などが混入したペットフードが流通するなどした場合には、農林水産大臣及び環境大臣は、製造業者、輸入業者又は販売業者に対し、廃棄、回収などの必要な措置をとるよう命ずることができます。
農林水産大臣又は環境大臣は、問題が起きた場合などにペットフードの製造業者等から必要な報告の徴収又は立入検査等を行うことができます。また、(独)農林水産消費安全技術センターに立入検査等を行うことができます。
ペットフード安全法の成立の経緯
2007年3月に米国において、有害物質(メラミン)が混入したペットフードが原因となって、多数の犬及び猫が死亡。6月には、メラミンが混入したペットフードが、我が国で輸入販売されていたことが判明しました。
それを受けて、農林水産省及び環境省が合同で有識者による「ペットフードの安全確保に関する研究会」を設置。11月には研究会の中間とりまとめとして、動物愛護の観点からペットフードの安全確保に緊急に取り組むべきであり、法規制の導入が必要であるとの方向性が示されました。
翌2008年3月には農林水産省と環境省の共管で、「愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律」案を提出し、6月11日に成立、18日公布されました。
参照:ペットフード安全法に基づく取組、農林水産省
また、ペットフードであっても、含まれる成分や、ラベルの表示、雑誌、Web等の広告宣伝物や口頭での製品の紹介等の内容などによっては、動物用医薬品に該当し、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(薬機法)の規制を受けます。
ペットフード製造 や輸入 には事業者としての届出が必要
ペットフードの製造業者及び輸入業者は、名称や所在地等の事業に関する情報を、事前に主たる事務所の所在地を管轄する地方農政局等に届け出ます。
愛玩動物用飼料〔製造・輸入〕業者届
製造と輸入の両方を行う場合は、製造業者の届出と輸入業者の届出がそれぞれ必要です。届出書上のあて先は農林水産大臣及び環境大臣ですが、実際の届出先は、主たる事務所の所在地の都道府県を管轄する地方農政局等です。
①氏名・住所
法人の場合は、法人名・代表者の職名と氏名を記載し、氏名や住所を確認できる書面(登記簿謄本など)を添付して提出します。
個人の場合は、氏名・住所を記載し、その氏名と住所を確認できる書面(住民票・運転免許証の写しなど)を添付して提出します。
②ペットフードを製造する事業場の名称・所在地
製造する事業場が複数ある場合、届出書に全て列挙します。なお、事業場の名称がない場合でも、「本社工場」など事業場を特定する名称の記載が必要となります。
③販売業務を行う事業場、ペットフードを保管する施設の所在地
販売の事業場や保管施設が複数ある場合も、届出書に全て列挙します。なお、「販売業務を行う事業場」とは、売上げが計上される事業場のことで、「ペットフードを保管する施設の所在地」とは、保管する倉庫のことであり、自己所有の施設だけでなく、第三者が所有している施設も含まれます。
④ペットフードを使用する動物の種類
犬用のペットフードを販売する場合は「犬」、猫用の場合は「猫」と記載します。
⑤製造または輸入の開始年月日
事業を開始する予定の年月日を記載します。
⑥輸出用として製造するペットフードについてはその旨
輸出用がない場合は「輸出用はなし」と記載。輸出用のものがある場合、一部が輸出用であれば「輸出用を含む」、全てが輸出用であれば「全て輸出用」などと記載してください。
ペットフード安全法に基づく届出は、製造や輸入の事業を開始する前に行わなければなりません。また、届出事項に変更が生じた場合や、その日から30日以内に、登記簿等を添付して、届出を行う必要があります。
自作で ペットフード製造
ペットフードを販売する場合、許可を得る必要はありませんが、製造を行う事業者は、農林水産省への届出と帳簿の備付けが必要となります。届出については、主たる事務所がある都道府県を管轄する地方農政局等に、届出書・登記簿等の写し・担当者の名前や連絡先が分かるものを提出しなければなりません。
帳簿については、例えば、ペットフードの製造業者であれば、ペットフードの名称・数量・製造年月日、原材料の名称及び数量を記載する必要があります。そして、帳簿またはそれを記録した電子データについて2年間の保存が必要です。
ペットフードの製造方法や表示の基準、成分の規格などが設定されており、この基準・規格に適合しないものの製造は禁止されています。
さらに、販売するペットフードには、以下を日本で表示することが義務付けられています。
①名称
②賞味期限
③原材料名
④原産国名
⑤事業者名及び住所
ペットフード製造 帳簿の記載・保存
ペットフードの輸入業者、製造業者又は販売業者(小売は除く)は、製造・輸入・販売の帳簿(記録)を残しておく必要があります。
(1)製造業者
- 製造したペットフードの名称・数量・製造年月日
- 原材料の名称及び数量
(2)輸入業者
- 輸入したペットフードの名称・数量・輸入年月日・荷姿
- ペットフードの輸入先国名・輸入の相手方の氏名又は名称
- 輸入したペットフードが製造された国名・製造業者の氏名又は名称・原材料の名称
(3)製造業者、輸入業者又は販売業者に譲り渡した場合(全ての業者)
- 譲り渡したペットフードの名称・数量
- 譲渡しの相手方の氏名又は名称・譲渡しの年月日・荷姿
ペットフードの出荷後に、基準・規格に違反していることが明らかになった場合などには、国は製造・出荷済みのペットフードの廃棄又は回収を命ずることができます。このような場合に備えて、各事業者において、製造・輸入・販売の記録を残しておく必要があります。
参照:ペットフード安全法に基づく取組、農林水産省
帳簿の記載が必要となる場合は、① 製造業者又は輸入業者が販売用ペットフードを製造又は輸入した場合、② 製造業者、輸入業者又は販売業者が販売用ペットフードを製造業者、輸入業者又は販売業者に譲り渡した場合となっています。
②の「譲渡し」とは、製造業者、輸入業者又は販売業者に製品を販売することをいいます。これらの相手方との間に、製品の輸送等を行う運送業者・倉庫業者や、代金の弁済等を行う商社等の中間業者が介在する場合であっても、最終的に譲り渡す相手方に製品を販売することを「譲渡し」とし、中間業者への引渡しや、中間業者間の引渡しは「譲渡し」に含まれません。
また、相手方が製品を受領した時点で、「譲渡し」が完了したこととします。(ただし、製品の回収等が必要となる場合に備えて、これらの中間業者間の物流についても、製造業者、輸入業者又は販売業者の責任の下、製品のトレーサビリティー上、必要なデータの把握ができる体制を整えるよう努めてください。)
なお、「販売業者」とは、販売用ペットフードの販売を業とする者(製造業者・輸入業者を除きます。)をいい、販売用ペットフードを販売している問屋、ホームセンター、スーパー、動物病院等も販売業者に該当します。
販売業者から他の販売業者に販売用ペットフードを譲り渡す場合(問屋間の卸売、ホームセンターから他のスーパーへの販売、動物病院から他の動物病院への販売など)は、帳簿の記載が必要ですが、小売の場合(=消費者に直接譲り渡す場合)には、帳簿の記載は義務化されてはいません。
さらに、ペットフードの原材料の販売や、包装業者に包装のみを委託するために中身を引き渡す場合は、「譲渡し」には該当しません。
帳簿の記載方法及び保存期間等
帳簿の記載に当たっては、ノートやコンピューターに記録されることを原則とします。ただし、原料規格書、製品規格書、原材料の納品伝票、製品の販売伝票、製品の受領書、輸入許可通知書、送り状(インボイス)など、業務上の管理書類に記載事項が備えられている場合は、それらの書類を保存することで、帳簿の記載に代えることができます。
帳簿については、記載した帳簿や記録した電子データを、2年間は保存してください。
なお、帳簿は各事業場等において備え付けていただくことが基本になりますが、輸入(営業)倉庫等の帳簿を保管することが困難な事業場等にあっては、当該事業場等を管轄する営業所や本社において備え付けていただいても構いません。ただし、その場合でも、FAMIC等の立入検査の際には、各事業場等において帳簿の記載、備付けの状況がわかるようにしてください。
製造文書の作成
組織の理念や体制を含め、安全や品質の確保にとって大切なことは、あらかじめ文書にまとめ、必要な人がいつでも閲覧できるようにしましょう。また、作業内容についても、特に重要な事項は文書化し、必要に応じていつでも利用できるようにしましょう。
- 安全性や品質に関する基本的な考え方
- 組織図(各自の役割を明確にする)
- 工場の全体図(レイアウト、設備・機器、工程等)
- 仕様書/規格書(原材料、中間製品、最終製品)
- 作業マニュアル(製造、検査、保守点検、清掃・洗浄、是正措置、苦情処理、危機管理等)
ペットフード製造 関連の法律違反事例
ペットフードの製造方法や表示の基準、成分の規格などが設定されており、この基準・規格に適合しないものの製造は禁止されています。
基準に合わないものや有害物質を含むものを製造していた場合には、以下のような厳しい罰則があります。
- 1年以下の懲役または100万円以下(法人の場合1億円以下)の罰金、
- 届出を怠った場合には20万円
- 帳簿の不備や虚偽記載には10万円以下の罰金
ペットフードに絡んだ違反等は最近見られませんが、人間の化粧品や健康サプリと同じく、動物用でも表示や広告での違反が発生しています。
- 2023年5月には、無許可で犬用のサプリメントを製造して販売した疑い(薬機法違反)などで書類送検されました。サプリメントを売るときに、ホームページなどで「認知症予防」や「抗がん作用」などの効果をうたっていたためです。
- 2023年9月には、ペット用サプリメントを医薬品に相当する効能効果を書いて販売し逮捕されました。薬機法は人間だけを対象とはしていませんし、処罰も重くなります。
eMAFFによる ペットフード製造 業者届、輸入業者届等の提出
届出は、gBizID(ジービズアイディー)を用いたオンラインでも可能です。もちろん、窓口や郵送も受け付けています。
農林水産省共通申請サービス(eMAFF)
農林水産省では、当省の所管する法令に基づく申請や補助金・交付金の申請をオンラインで行うことができる農林水産省共通申請サービス(通称eMAFF)の構築を行っております。
ペットフード安全法に基づく、愛玩動物用飼料製造業者届、輸入業者届、変更届、廃止届、承継届について、eMAFFを導入しました。eMAFFによる届出を行うためには、経済産業省の法人共通認証基盤を用いて発行される「gBizID(ジービズアイディー)」を取得する必要があります。
参考記事:GビズID とは? 電子申請で行政書士報酬もお得に!
過去の記事でも、GビズIDの解説をしています。プライムですと郵便で住所確認をするために1週間程度はかかるなども説明しています。
gBizIDには「プライム」と「エントリー」の2種類のアカウントがありますが、「エントリー」ではeMAFFでの届出はできないため、「プライム」のIDを取得してください。既に別の機会に「gBizプライムID」を取得している場合は、そのIDをご利用いただけます。
制度名及び手続名
愛がん動物用飼料の製造業者又は輸入業者届 | 犬猫用ペットフードの製造業又は輸入業を開始する際の届出です。(ペットフード安全法第9条第1項) | |
愛がん動物用飼料の製造業者又は輸入業者の変更届 | 犬猫用ペットフードの製造業者又は輸入業者の届出事項に変更を生じた際の届出です。(ペットフード安全法第9条第3項) | |
愛がん動物用飼料の製造業者又は輸入業者の廃止届 | 犬猫用ペットフードの製造業者又は輸入業者が事業を廃止した際の届出です。(ペットフード安全法第9条第3項) | |
愛がん動物用飼料の製造業者又は輸入業者の承継届 | 他の犬猫用ペットフードの製造業者又は輸入業者の事業を承継した際の届出です。事業の譲り渡し、相続、合併、分割等が該当します。(ペットフード安全法第9条第4項及び第5項) |
ペットフード製造 ペットフード安全法 動画解説
ドッグフード製造 届出 も頼りになるのは 行政書士
ペット愛好家が増える中、ペットフードの需要も高まり、老犬になるにつれて歯が無くなっても食べられる柔らかいウェットフードを自作したり、購入したりするケースが多いように思います。自宅製造は禁止されていませんので、製造場所として届出に自宅住所を書くことができます。
ただし、製造に関しては、製造管理や品質管理を行うことが求められています。手作りだから販売できないということはありませんが、事業者はペットフードの安全確保について第一義的な責任があり、安全な原材料や方法でペットフードを製造する必要があります。
ドッグフードの製造には、消費や消費の期限の設定など製造以外の専門性も要求され、量にもよりますが一定の設備がないと難しいかもしれません。また、管理の帳簿の保存を2年間求められるなど、人間の食品でないとはいえ、事故の防止や原因究明への指導もあります。
こうした煩雑な書類の作成や届出準備なども、行政書士にお任せ下さい。薬機法の許可や法律手続きの専門家である行政書士の代行も可能ですので、ペットやペットフードの届出書類も、医療系の申請手続きに通じる行政書士にご依頼ください。ペット業界は参入障壁も低く、需要も拡大中で成長の可能性を秘めておりますので、事業をお手伝いしてまいります。
開業支援も行政書士にご依頼ください
開業を控えたお客様もご活用ください。
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ペットフード製造業届のみならず、会社設立や資金調達、契約書等の書類の作成なども行います。
参考記事:会社設立 ~ 株式会社設立