前回は、航空法上の「ドローンの飛行禁止空域」について解説しました。今回は、同じく航空法上の「飛行方法の要件」について解説したいと思います。航空法では、前回紹介した飛行禁止空域に限らず飛行方法についても、許可が必要なケースを規定しています。
ドローン 飛行方法の要件とは
ドローン 飛行方法の要件
飛行方法については、以下の六つのケースで、許可が必要になります。
1) 夜間での飛行
2) 目視外での飛行
3) 人又は物件と距離を確保できない飛行
4) 催し場所上空での飛行
5) 危険物の輸送
6) 物件の投下
航空法上の規制対象の飛行方法
それぞれについて詳しく見てみましょう。
1) 夜間での飛行
ドローンの飛行は原則昼間(日中)のみとされており、夜間での飛行はその条件を満たした上で、事前に承認を得る必要があります。理由は、夜間はドローンや周囲の障害物等の把握が困難になり、墜落等の恐れが高まる為です。
なお夜間となる時間を判断する「日出から日没までの間」については、2024/6の航空局資料「無人航空機に係る規制の運用における解釈について」(以下、「2024/6資料」)において、以下のように指針が提示されています。
「日出から日没までの間」とは、国立天文台が発表する日の出の時刻から日の入りの時刻までの間をいうものとする。したがって、「日出」及び「日没」については、地域に応じて異なる時刻を表す。
国立天文台のサイトでは、場所、日付を指定すると、日の出、日の入りの時刻が表示され、夜間飛行となる時間帯を把握することができます。
日の出、日の入り時刻の確認方法
出所:国立天文台「暦計算室」
2) 目視外での飛行
ドローンの目視外飛行は難易度が高いため、許可が必要です。
2024/6資料では、以下のように説明しています。
飛行させる無人航空機の位置や姿勢を把握するとともに、その周辺に人や障害物等がないかどうか等の確認が確実に行えることを確保するため、(原則)目視により常時監視を行いながらの飛行に限定することとしている。ここで、「目視」とは、操縦者本人が自分の目で見ることをいうものとする。この ため、補助者による目視は該当せず、また、飛行状況を専らモニターを用いて見る こと、また双眼鏡やカメラ等を用いて見ることは、視野が限定されるため「目視」 にはあたらない。
許可を得て目視外飛行をする場合、通常、ドローン本体に搭載されたカメラの映像を手元のモニターに映し、それを見ながら操作します。なお目視外飛行許可を得るためには、目視外飛行における「基本的な操縦技量の習得」が必要な点にも注意が必要です。
3) 人又は物件と距離を確保できない飛行
飛行させるドローンが地上又は水上の人又は物件と衝突することを防止するため、ドローンとこれらとの間に一定の距離(30m)を確保して飛行させることとされています。
ここでいう「人」、「物件」については、2024/6資料に以下のように定義されています。
「人」とは、操縦者及びその関係者(無人航空機の飛行に直接的又は間接的に関与している者)以外の者(第三者)をいう。
「物件」とは、次に掲げるもののうち、操縦者及びその関係者(無人航空機の飛行に直接的又は間接的に関与している者)が所有又は管理する物件以外のもの(第三者の物件)をいう。
a)中に人が存在することが想定される機器(車両等)
b)建築物その他の相当の大きさを有する工作物
※なお、以下の物件は、本規定の趣旨に鑑み、本規定の距離を保つべき物件には該当しない。
a)土地
b)自然物(樹木、雑草 等) 等
なお飛行中だけでなく離着陸の際にも、人や物件から30メートル離れていなければ許可が必要となるため注意が必要です。
4) 催し場所上空での飛行
イベントなど、一時的に「多数の者の集合する催し」が行われている場所の上空においては、無人航空機を飛行させ故障等により落下すれば人に危害を及ぼす可能性が高く、事前に許可が必要になります。
どのような場合が「多数の者の集合する催し」に該当するかについて、2024/6資料では以下のように規定しています。
催し場所上空において無人航空機が落下することにより地上の人に危害を及ぼすことを防止するという趣旨に照らし、集合する者の人数や密度だけでなく、特定の場所や日時に開催されるものかどうか、また、主催者の意図等も勘案して総合的に判断される。
なお想定せずに「多数の者の集合する催し」が開催されることが明らかになった場合、飛行の停止、飛行経路の変更、安全な場所への着陸等の措置を講じることも必要です。
5) 危険物の輸送
危険物の輸送についても事前許可が必要です。
理由は、万一ドローンの落下により輸送している危険物が漏出した場合に、周囲への当該物質の飛散や機体の爆発により、人への危害や他の物件への損傷が発生するおそれがあるためです。
なおここでいう危険物は毒物類、引火性液体、火薬類、凶器など、航空法に定められたものを指します。危険物には農薬も含まれ、農薬散布の際には後述する物件投下の許可も必要になります。
6) 物件の投下
ドローンが物件を投下した場合、地上の人等に危害をもたらすおそれがあるとともに、物件投下により機体のバランスを崩すなどドローンの適切な制御に支障をきたすおそれもあるため、事前許可が必要になります。
2024/6資料では従来からの解釈と同様に、
「水や農薬等の液体を散布する行為は物件投下に該当する」としたものの、
「対象物件を地表等に落下させることなく地上の人員に受け渡す行為や輸送した物件を地表に置く行為は物件投下には該当しない」との新たな指針が提供されました。
なお物件投下の許可を得るには物件投下の実績があるか、所定の訓練を受けていることが必要になります。
その他の注意
その他の注意として、飛行場所や許可の有無に限らず、以下を遵守する必要があります。
A. 飲酒や薬物摂取をした際の飛行禁止
体内に保有するアルコール濃度の程度にかかわらず体内にアルコールを保有する状態ではドローンの飛行を行わないことが必要です。 なお「薬物」とは、麻薬や覚醒剤等の規制薬物に限らず、医薬品も含まれます。
B. 飛行前確認をすること
飛行に必要な準備が整っていることを確認した後に飛行することとされています。
2024/6資料では、飛行前確認について具体的に以下のように規定しています。
- 外部点検及び作動点検などの日常点検を実施し、「無人航空機の飛行日誌の取扱要領」の日常点検記録に記録すること。
- 当該無人航空機を飛行させる空域及びその周囲の状況を確認すること。
- 当該飛行に必要な気象情報を確認すること。
- 燃料の搭載量又はバッテリーの残量を確認すること。
C. 衝突予防をすること
航空機又は他のドローンとの衝突を予防するため、ドローンをその周囲の状況に応じ地上に降下させる等の方法をとることとしています。具体的には、2024/6資料において以下の例が挙げられています。
- 操縦者は、無人航空機の飛行経路上及びその周辺の空域において飛行中の航空機を確認し、衝突のおそれがあると判断される場合は、当該無人航空機を地上に降下させることその他適当な方法を講じることとする。
- 操縦者は、無人航空機の飛行経路上及びその周辺の空域において飛行中の他の無人航空機を確認したときは、他の無人航空機との間に安全な間隔を確保して飛行させること、又は衝突のおそれがあると判断される場合は、無人航空機を地上に降下させることその他適当な方法を講じることとする。
D. 危険な飛行の禁止
不必要に騒音を発したり急降下させたりする行為は、周囲に不快感を与えるだけでなく、危険を伴うこともあることから、他人に迷惑を及ぼすような方法での飛行は禁止されています。ここで、「他人に迷惑を及ぼすような方法」とは、人に向かって無人航空機を急接近させることなどをいうものとされています。
その他飛行方法に関する注意事項
まとめ
飛行方法については、航空法において大きく6つの飛行方法が規制対象として規定されており、さらにその他の全般的な注意事項が4つ規定されています。前回紹介した飛行禁止空域とともに当記事における飛行方法等の規制も確認の上、許可の要否を判断することが重要です。2024/6資料のように各規制の具体的な例示がされるケースもあるため、国交省のサイトなどを定期的にチェックすることは欠かせないと言えるでしょう。
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文責: あおば総研(行政書士)