さまざまな申請の際に必要とされることがある 印鑑証明書 についての解説をします。法人の印鑑証明書とは、登録された印鑑が本物であることを証明する書類で、印鑑登録の手続きが済むと取得できます。個人はマイナンバーカードでコンビニ取得ができるので便利になりましたが、依然として法人は相変わらず窓口でのやり取りとなります。
法人は「印鑑証明書」で、個人は正式には「印鑑登録証明書」とも呼ばれ区別されます。登録や取得で個人がプライバシーの制約がありマイナンバーカードを活用できるなど制約もありますが、基本的に法人でも個人でも基本的な機能には相違ありません。
先に印鑑登録を済ませる必要もありますので、登録の方法から説明していきます。
印鑑登録カードも発行されるので、代理人が役所の窓口で発行してもらうのは持参すれば委任状や本人確認もなく取得容易ですが、法人の印鑑証明書の時はコンビニではカードは使えません。
印鑑証明書 の 個人と法人の違い
印鑑登録証明書も印鑑証明書も、その印影が実印(法人の場合は会社代表者印)として登録されていることを証明する文書です。
証明書の題名において、
個人の場合は「印鑑登録証明書」、
法人の場合は「印鑑証明書」と記されています。
印鑑登録証明書(印鑑証明書)を取得する際に必要となるカードも、個人の実印の場合には「印鑑登録証」、法人の場合は「法務局印鑑カード」と記載されています。
法人の印鑑証明書の請求とは異なり、個人の印鑑登録証明書は郵送による請求ができません。本人か代理人が市区町村役場で請求して下さい。
一方、個人の印鑑登録証明書であれば、コンビニでもマイナンバーカードないし住民基本台帳カードで取得できます。しかし、法人の印鑑証明書は法務局へ交付申請書の提出が必要なので、コンビニで取得することはできません。
今回は、法人向けの説明としています。
会社にとって 印鑑証明書 の必要性とは
独立開業や新規事業を起こす場合、法人登録はもとより、その後のいろいろな手続き・申請・契約など、さまざまな場面で印鑑が必要となります。
印鑑廃止が進んでいるとはいえ、印鑑は、会社としての責任と意思を証明する非常に重要なアイテムです。印鑑の種類にもよりますが、社内・社外を問わず、仕事の道具にしっかり注意を払ったビジネスマナーを尊重している経営者であるという証明にもなるでしょう。
印鑑と一口に言っても、代表者印・社印・銀行印・ゴム印などさまざまな種類があります。本段落では、会社設立時に必要な印鑑の種類を紹介していきます。
①代表者印
法務局に登録申請を行う際や重要な契約を締結する際などに用いられるのが、代表者印です。実印、会社実印、丸印とも呼ばれ、会社を代表する印鑑
制限として「一辺の長さが1cmを超え、3cm以内の正方形に収まる」ものと規定されています。この条件を満たしていれば、ほかに決まりはありませんが、一般的には18mmの丸印が使用されるケースが多いです。
②社印
社印は角印とも呼ばれ、請求書や領収書の発行などの日常業務の中で使われる印鑑のことを言います。必ずしも会社設立の際に作る必要はありません。
③銀行印
銀行印は、銀行の口座を開設するのに必要となる印鑑です。社印と同様に、代表者印でも代替可能で、必ずしも作る必要はない印鑑です。ただ、銀行取引は、会社にとって重要なものなので、代表者印が悪用されるリスクを考えると、銀行取引専用の印鑑を作っておいた方が安心です。
法人の印鑑の登録・取得方法
印鑑登録とは、ハンコの印影を公的な機関に登録しておく制度のことです。
法人の場合は本店の所在地にある「法務局」で届出をします。
このときに届け出たハンコが「代表者印」と呼ばれ、会社の実印となります。
実印を登録しておくことで、必要なときに会社の印鑑証明書を取ることができるようになります。
法人の印鑑登録の手続きは、設立登記申請と同じタイミングで行います。 印鑑登録は、「印鑑届書」という決められた書類を提出することで手続きが完了します。
印鑑登録には会社の実印が必要ですが、会社の実印だけでなく、代表者本人の「個人」の実印と印鑑証明書も必要です。
本人が届け出るとき
‐ 必要なもの ‐
- 代表者印(会社実印)
- 代表者個人の実印
- 代表者個人の印鑑証明書(発行後3か月以内)
本人が届け出るときは、印鑑提出者本人にチェックを入れて、本人の住所・氏名などを記入します。
代理人が届け出るとき
法人の印鑑登録は本人が行わず、代理人が手続きをすることも可能です。
代理人は、代理人のチェックボックスにチェックをし、代理人の住所・氏名を記入します。 右のなつ印欄には、代理人の印鑑(認印でOK)を押します。
「委任状」と囲われた部分に関しては、本人が記入する必要があります。 また、委任状欄には、代表者が市区町村に登録している「個人」の実印を押さなければなりません。
印鑑カードの取り方
印鑑登録が済んだら、印鑑カードの交付を申請しましょう。
印鑑カードは、会社の「印鑑証明書」を取るために必要になってきます。
参照:印鑑カード
印鑑カード交付申請は会社を設立するときに必須な手続きではないですが、印鑑カードは、印鑑証明書を取ることができる非常に重要なカードです。
会社の設立登記完了時に手続きします。
印鑑カード交付申請書は、印鑑届書とよく似たフォーマットなので、印鑑届書と同じように記入しましょう。代理人に依頼する場合は、委任状欄にも記入します。
書類を提出したら、数分~数十分で印鑑カードをもらうことができます。
今後は、「印鑑証明書」を発行するには、この印鑑カードとあわせて印鑑証明書交付申請書を提出します。
郵送申請する場合
印鑑カードの交付申請は、郵送で手続きすることもできます。
印鑑カード交付申請書は、法務省ホームページで印刷できるので用紙を用意しましょう。
申請書の作成が終わったら、切手を貼った返信用封筒を同封して、本店所在地の法務局(登記所)に送付します。
また返送先の住所は、本店所在地か代表者個人宅の住所しか指定できないので注意してください。
法人の 印鑑証明書 の方法
法人の印鑑証明書が必要とされる場面には、次のようなものがあげられます。
- 登記事項変更の申請をするとき
- 法人用の銀行口座を開設するとき
- 法人名義の不動産や自動車を売買するとき
- 金融機関から融資を受けるとき
法人(会社)の印鑑証明書は、全国の法務局窓口で取得できます。
また、取得方法は法務局の窓口申請だけでなく、郵送申請・オンライン申請も可能です。
法務局の窓口で申請する方法
印鑑登録の手続きや印鑑カードの発行は、本店を管轄する登記所でしかできませんが、印鑑証明書の発行は全国どこの法務局でも取得可能です。
窓口取扱時間は月~金の午前8時30分~午後5時15分までです。
(※土曜・日曜・休日及び祝祭日・年末年始(12/29~1/3)を除きます)
‐ 必要なもの ‐
- 印鑑カード
- 印鑑証明書交付申請書
- 手数料(1通につき450円分の収入印紙 ※収入印紙は窓口で購入可)
申請書に、商号・名称(会社の名前)、本店・主たる事務所(会社の住所)、印鑑提出者の資格・氏名・生年月日、印鑑カードの番号を記入します。
印鑑証明書の発行を請求できるのは、基本的には印鑑提出者本人とされていますが、代理人でも申請できます。委任状は特に必要ありません。
法務局に設置されている自動申請機に印鑑カードを挿入してタッチパネルで申請することが一般的になっています。
郵送で申請する方法
法人(会社)の印鑑証明書は郵送で取ることもできます。
郵送の場合、以下の手順で申請できます。
法務省ホームページから印鑑証明書交付申請書をダウンロードして印刷して、申請書に記入し、収入印紙を貼る
‐ 必要なもの ‐
- 郵送用の封筒+送料(以下のものをまとめていれる)
- 印鑑証明書交付申請書(法務省HPより印刷して記入する)
- 手数料(1通につき450円分の収入印紙を申請書に貼り付けておく)
- 印鑑カード(原本を同封する)
- 返信用封筒(切手を貼り付けておく)
申請書・印鑑カード(原本)・返信用封筒をまとめて封筒にいれ、法務局(登記所)に送付する。
書類が受理されたら、法務局から印鑑カードと印鑑証明書が郵送で届きます、
オンラインで申請する方法
※オンラインで印鑑証明書を申請するためには、前もって法人の電子証明書を取得しておく必要があります。
電子証明書の発行については、以下を参照ください。
電子証明書が取得できている場合、供託オンライン申請システム「申請用総合ソフト」より申請が可能です。
‐ 必要なもの ‐
- 電子証明書(申請用総合ソフト上で添付)
- 印鑑カード(印鑑カード番号)
- インターネットバンキングのID・パスワードなど
ハンコとサイン
2020年11月、河野太郎行政改革担当大臣が記者会見において「民から官への行政手続きにおいて認印はすべて廃止する。しかし、印鑑証明書が必要なものは残す」という主旨を語りました。
「はんこ社会」と言われてきた日本ですが、今後はコロナを機に「はんこ廃止」に向けた具体的な動きが本格化していきそうです。
はんこを偽造は「1年以上10年以下の懲役」
現代の日本において、「はんこ」とは法律とも結びついているものです。例えば、「刑法第百五十五条 公文書偽造等」の条文を見てみましょう。
行使の目的で、公務所若しくは公務員の印章若しくは署名を使用して公務所若しくは公務員の作成すべき文書若しくは図画を偽造し、又は偽造した公務所若しくは公務員の印章若しくは署名を使用して公務所若しくは公務員の作成すべき文書若しくは図画を偽造した者は、1年以上10年以下の懲役に処する。
刑法 第155条
はんこを偽造し、公文書を偽造すると「1年以上10年以下の懲役」という重い刑罰が課されるのです。
また、同じ「文書偽造罪」でも印章の有無によって、司法判断、量刑すら変わる場合も存在します。それほどまでに、現代の日本社会において「はんこ」とは重い意味合いを持つものとして捉えられてきました。
江戸時代の承認にもハンコが浸透
商工業の発展と共に、権利義務関係を証する文書に「はんこ」を押すのが通例とされました。江戸時代が安定してきた三代将軍・徳川家光の時代、寛永期(西暦1624年〜1643年)には、名主・庄屋クラスの農民も皆「はんこ」を持っていたと言われています。
この流れは明治維新後にも受け継がれ、維新によって一般庶民の誰もが「苗字」を名乗ることが許されました。これをきっかけに、「はんこ」の需要は爆発的に高まったのです。
明治6年の「太政官布告」において、人民相互の証書書面には「自署(サイン、花押や爪印も含む)」よりも「実印」を使うべし、といった旨が定められたようです。
海外のハンコ事情
印鑑の習慣が一般にも根付いている国はお隣「韓国」と「日本」の二国だけといわれ、二国以外の国のほとんどは「サイン文化」となっています。これらの国でも印鑑の廃止に向けた動きが見られています。
そもそも、東アジア(日本、台湾、中国大陸、朝鮮半島)における判子文化発祥の地は中国で、古いものでは歴史の教科書で、金印として広く知られている「漢委奴国王印(カンノワノナノコクオウイン)」があります。古い中国の絵画などをみると、作者や過去の保有者などの大きなハンコがベタベタとたくさん押されているのが分かります。
しかし、その中国においても、王族や貴族などの特権階級での習慣であり、一般家庭内では印鑑はほとんど使用せずに、サインをもって証明することの方が多かったそうなので、スマホ文化が定着した中国ですが以前からサイン中心とのことです。
日本でも、明治になって大衆は苗字を持つようになり、富国強兵や事務教育の浸透に合わせて急速に印鑑文化が浸透したのでしょう。
海外では日本のように印鑑が使われることはほぼありません。海外では、印鑑以外の手段で契約を結びます。欧米を中心に、海外では契約を締結する際に自筆のサイン(署名)をします。首脳同士が協定書や覚書にサインをしているシーンをニュースで見たことがある方は多いでしょう。
日本では印鑑登録をして印鑑証明証を取得することで、その印鑑(実印)が本人のものであることを証明することができます。一方で海外では公証人が署名に立ち会うことで、本人が書いたサインであることを証明することができます。
電子署名がハンコもサインも席巻
世界的に、ビジネスの場面では印鑑やサインに替わって、電子署名が台頭しています。
電子署名では、インターネットを介してパソコンやスマートフォン上で書類に署名します。
電子署名にはタイムスタンプで署名をした日時が記録され、電子認証局が本人認証を行った上で発行する電子証明書が付与されるため、電子署名を付与した人が本人であること、また署名が改ざんされていないことを証明できます。
法人の設立などの手続きは 行政書士 にお任せ
コンビニが利用できる個人の印鑑証明に比べて、法人の場合には手間がかかります。
オンラインの活用で申請がやりやすい部分もありますが、電子証明書の証明の追加費用も発生しますし、郵送に比べると初回の手間が大きそうです。
印鑑証明書は、原則、印鑑提出者である会社代表者本人しか請求することができません。代理人による請求も可能です。委任状は必要ありませんが、印鑑カードが必要となります。郵送時と同じように、印鑑カードの受け渡しが必要になり難しい面もございます。
幸い、現在では全国の法務局がオンラインでデータを共有しているため、どこに会社の本店があったとしても、全国どこの法務局からでも印鑑証明書の請求ができます。したがって、即日必要な場合には、法人が印鑑証明書を取得するためには最寄りの法務局へ行けばよいのです。
また、発行請求機を利用しての請求の方法は、端末に印鑑カードを挿入し、画面の案内に従って会社の情報を入力していきます。1つ注意することは、代表者の生年月日を入力する必要がありますので、代理人の方が請求する場合には、事前に確認しておく必要があります。以降の手続きは申請書を提出する方法と同じです。
小規模の会社の場合ですと、代表者の法人と個人の資産で関係が深い場合もありますので、事業用の不動産の購入やその後の売却など、更には遺産相続にも相談があろうかと思います。そうしたきっかけとしても、ご依頼をお待ちしております。
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